メッセージが届いたら、すぐに返す。
それを当たり前にしていた時期が、僕にもある。
返信が速い人は、感じがいい。
そう思われたくて、通知が鳴るたびにスマホを手に取っていた。
速さは、時間を前払いする行為
ある日、一日の自分の動きを振り返ってみた。
作業を始めて、通知が来て、返信して、また作業に戻る。
その往復が、思っていたよりずっと多かった。
一度途切れた集中は、元に戻るまでに時間がかかる。
つまり即レスは、相手への好印象と引き換えに、自分の時間を前払いしているのだと思う。
僕は時間をお金と同じくらい大事な資源だと考えている。
だから、その前払いが本当に割に合っているのか、一度計算してみたくなった。
急ぎの用事は、意外と少ない
試しに、返信を一日三回にまとめてみた。
朝、昼過ぎ、夜の三回だけ、まとめて見て、まとめて返す。
最初は不安だった。
相手を待たせて、嫌われるのではないかと。
けれど、一週間やってみて分かったことがある。
本当に急ぎの用件は、ほとんど来ない。
急ぎなら、相手は電話をかけてくる。
文字で届くものの大半は、数時間遅れても困らない内容だった。
これは、僕の周りではそうだったという話で、誰にでも当てはまるとは言えない。
ただ、一度試してみる価値はある気がする。
遅い返信が、丁寧になることもある
もうひとつ、意外な変化があった。
まとめて返すようになってから、返信の中身が少し丁寧になった。
反射で返すと、短くて雑になりやすい。
時間を置くと、相手の言葉をもう一度読み直せる。
何を聞かれているのか、どう答えれば相手が動きやすいのか、考える余裕が生まれる。
速さで得られる印象より、中身で得られる信頼の方が、長く残るのかもしれない。
そう考えると、返信の速さは、評価を買うための手段としては案外効率が悪い。
自分の基準を、先に決めておく
もちろん、仕事の連絡や、約束の直前の確認は別だ。
早く返すべき相手と、待ってもらっていい相手を、先に分けておくといい。
家族や、緊急の連絡先は通知を残す。
それ以外はまとめて見る。
この線引きを一度決めてしまえば、通知のたびに迷うこともなくなる。
迷う回数が減るだけでも、頭の中はずいぶん静かになる。
即レスをやめたら、世界が冷たくなったわけではない。
むしろ、自分の時間を自分で選んでいる感覚が戻ってきた。
もし最近、スマホに追われている気がするなら、返信の回数を決めてみるのも悪くないと思う。
――一ノ瀬 雅


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