移動時間は、意外と長い
僕は一日の中で、移動している時間を一度数えてみたことがある。
通勤や買い物、待ち合わせへの往復。
合計すると、思っていたより長かった。
週に直すと、半日ぶんくらいになる。
その時間を、僕はずっと「ただの空白」として扱ってきた。
スマホを眺めて、気づいたら着いている。
それが悪いわけではない。
ただ、お金を払って手に入れた時間ではなく、勝手に消えていく時間だと気づいたとき、少しもったいない気がした。
空白に、小さな役目をつける
そこで僕は、移動の時間に小さな役目をつけることにした。
難しいことではない。
行きは音声で情報を聞く。
帰りは何も入れずに、ただ景色を見る。
それだけで、同じ移動が別の時間になる。
行きの時間は、投資に近い。
帰りの時間は、回復に近い。
どちらも、目的があるぶん、満足度が違う気がする。
全部を埋めなくていい
ここで大事なのは、全部を有効活用しようとしないことだと思う。
空白をすべて埋めると、今度は疲れが残る。
僕は合理的な考え方が好きだが、休む時間まで効率で測るのは違うと感じている。
だから役目をつけるのは、移動の半分くらいにしておく。
残りの半分は、何もしない時間として残す。
その余白があるほうが、結果的に頭が整理される気がする。
小さく試す方法
もし試してみるなら、一週間だけやってみるのも悪くない。
最初の三日は、行きの時間だけに役目をつける。
聞くものは、仕事に関係ないものでもいい。
興味のある分野の話なら、それだけで続けやすい。
四日目以降は、帰りの時間をあえて空にしてみる。
そのうえで、どちらが自分に合うかを見比べる。
合わなければ、やめればいいだけだ。
続けるかどうかを決める材料としては、一週間で十分だと思う。
時間の見え方が変わる
この習慣を始めてから、僕は時間の見え方が少し変わった。
一日は二十四時間あるが、自由に使える時間はそれほど多くない。
だから、勝手に消えていた時間を取り戻せるのは、静かに大きい。
お金のように目に見えないぶん、気づいた人から得をする部分だと思う。
大きな変化を起こさなくても、小さな工夫の積み重ねで日常は少しずつ軽くなる。
最後に
移動時間は、誰にでも平等にある数少ない余白だ。
そこに小さな役目をひとつだけ置いてみる。
それだけで、一日の手触りが変わるかもしれない。
今日の帰り道は、何も入れずに歩いてみるのも悪くない。
そんな気分になった人は、試してみてほしいというより、気が向いたら思い出してくれたら嬉しい。
――一ノ瀬 雅


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