何かを買うとき、比較を始めると止まらなくなることがある。
レビューを読み、スペック表を並べ、別のサイトでも値段を調べる。
気がつくと一時間が過ぎていて、結局最初に見ていたものを買う。
僕はこれを何度も繰り返して、あるときから比べる時間に上限を決めるようにした。
比較にも、コストがかかっている
比べること自体は、悪いことではないと思う。
失敗を減らすための、合理的な手順だ。
ただ、比較には時間という見えにくいコストがかかっている。
数千円のものを選ぶのに二時間使ったとしたら、その二時間にはいくらの価値があったのか。
そう考えると、浮いた数百円より、失った時間のほうが大きいことも少なくない気がする。
しかも、比較を長く続けるほど判断は鈍っていく。
選択肢が増えるたびに、どれを選んでも「別のほうが良かったかもしれない」という気持ちが残る。
時間をかけたのに、満足度はむしろ下がっていく。
それなら、最初から比べる量を絞ったほうが、得るものは多いのかもしれない。
金額で、使う時間を決めておく
僕がやっているのは、とても単純なルールだ。
数百円のものなら、ほとんど比べない。
数千円なら、十五分くらい。
数万円なら、一晩置いて、次の日にもう一度だけ見直す。
それ以上のものは、詳しい人に聞くか、時間をかけてもいいと割り切る。
金額に応じて、かける時間の枠を先に決めておくわけだ。
枠があると、不思議と集中できる。
見るべきポイントを最初に二つか三つに絞り、それ以外は気にしないと決めてしまう。
すると、細かいスペックの差に振り回されることが減った。
「八割で良し」とする感覚
上限を決めると、当然、ベストではない選択をすることもある。
あとから、もう少し安い店や、少し性能のいい別の型番を見つけることもある。
でも僕は、それでいいと思っている。
八割くらい満足できるものを短時間で選べたなら、それは十分に良い買い物だ。
残りの二割を詰めるために、同じだけの時間をもう一度使うかどうか。
そこを冷静に考えると、多くの場合は使わないほうが合理的だと感じる。
浮いた時間で、買ったものを実際に使い始めたほうが、ずっと得るものがある。
迷いを、次に持ち越さない
もう一つ、上限を決めてよかったと思うことがある。
買ったあとに、迷いを引きずらなくなったことだ。
時間を決めて、その中で一番良さそうなものを選んだ。
その事実があるだけで、「自分なりに筋の通った選び方をした」と納得しやすくなる。
逆に、だらだら比べ続けた買い物ほど、あとで他の選択肢が気になって仕方がない。
選んだあとの気持ちの軽さも、時間の使い方の一部なんだと思う。
まずは、身近な買い物から
いきなりすべての買い物にルールを当てはめる必要はない。
まずは、日用品や数千円くらいの買い物で試してみるのも悪くないと思う。
タイマーを十五分にセットして、その間に決める。
それだけで、意外とすんなり選べることに気づくかもしれない。
比べる時間を減らして、選んだものと過ごす時間を増やす。
僕にとっては、そのほうがずっとメリットのある使い方な気がしている。
――一ノ瀬 雅


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