部屋の隅に、一年以上開けていない箱がある。
そういう人は、わりと多いんじゃないかと思う。
僕にも、以前はいくつかあった。
今日は、その箱の話を少しだけしてみたい。
持っているだけで、コストはかかっている
使わないものは、置いておくだけならタダだと思われがちだ。
でも、僕はそうは考えていない。
家賃を床面積で割ってみると、一畳あたりの値段がなんとなく見えてくる。
使わない箱が占めている場所にも、毎月その分のお金を払っているということになる。
しかもコストはお金だけじゃない。
掃除のときにどかす手間、探し物をするときに視界に入る雑音、引っ越しのときに運ぶ労力。
一つひとつは小さいけれど、毎日少しずつ時間と注意力を削っていく。
僕はこれを、ものの「保管料」と呼んでいる。
「いつか使う」の正体
手放せない理由として一番多いのは、「いつか使うかもしれない」だと思う。
僕もずっとそう思っていた。
でも、その「いつか」が来たことは、振り返ってみるとほとんどなかった。
仮に来たとしても、そのとき買い直した方が、新しくて状態も良いものが手に入る。
数年分の保管料と、一回分の買い直しの費用。
並べて比べてみると、後者の方が安く済むことが多い気がする。
「いつか使う」は、未来の自分への配慮に見えて、実は今の自分が判断を先送りしているだけなのかもしれない。
僕が使っている、手放すときの基準
とはいえ、何でも捨てればいいとは思っていない。
大事なのは、自分なりの基準を一つ持っておくことだと思う。
僕の場合は、「今これを持っていなかったとして、同じ値段でもう一度買うか」を自分に聞いてみる。
答えが「買う」なら、それは今の僕にとって価値があるものだ。
答えが「たぶん買わない」なら、持ち続ける理由は思ったより薄い。
この問いの良いところは、「もったいない」という感情を一度横に置けることだ。
過去に払ったお金は、もう戻ってこない。
判断の材料にすべきなのは、これから先のメリットだけだと僕は考えている。
減らした分、何が増えたか
箱をいくつか手放してから、部屋が少し広くなった。
それ以上に変わったのは、頭の中の余白だった。
どこに何があるかを把握できていると、探す時間がほぼなくなる。
出かける前に慌てることも減った。
持ち物が少ないと、新しく何かを買うときの判断もはっきりする。
「これは今あるものと置き換わるのか、ただ増えるだけなのか」と考える癖がついたからだ。
結果的に、本当に気に入ったものにだけお金を使うようになった気がする。
全部やらなくていい
こういう話をすると、週末を丸ごと使って片付けをしたくなる人もいると思う。
でも、僕はそこまでしなくていいと思っている。
まずは一箱だけ、中身を確認してみる。
その中で一つだけ、さっきの問いに「買わない」と答えたものを手放してみる。
それくらいの小さな一歩でも、保管料の考え方は十分に身につく。
持ち物は、自分の時間と空間をどう使うかの選択そのものだ。
使わないものに毎日家賃を払うより、今の自分に合ったものだけを手元に置いておく。
そういう暮らし方を、一度試してみるのも悪くないと思う。
――一ノ瀬 雅


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