安いものを、何度も買い直さない

安いものを、何度も買い直さない コラム

安いものを見つけると、少し得をした気分になる。

その感覚自体は、悪くないと思う。

ただ、僕は「安いから」という理由だけで物を選ぶのを、だいぶ前にやめた。

今日はその話を少しだけ書いてみる。

安さは、最初の一回しか見えない

値札に書いてあるのは、買うその瞬間の金額だけだ。

そこには、使い続ける間のことは何も書かれていない。

すぐに壊れる、使いにくい、なんとなく気に入らない。

そういう小さな不満は、買ったあとで少しずつ積み上がっていく。

そして多くの場合、同じようなものをもう一度探して、もう一度買うことになる。

二回買えば、安かったはずの金額は、ほとんど普通の値段と変わらなくなる。

三回目になれば、最初から良いものを選んでいた方が安かった、ということも珍しくない気がする。

本当に高くつくのは、選び直す時間

お金の話だけなら、まだ計算しやすい。

僕がもっと気にしているのは、選び直すたびに使う時間の方だ。

比較サイトを開いて、レビューを読んで、候補を並べて、また迷う。

一回あたりは三十分でも、それが何度も繰り返されると、けっこうな量になる。

その時間で本を一冊読めたかもしれないし、ただゆっくり休めたかもしれない。

安物を買い直すというのは、お金と一緒に、その時間も何度も支払っているということなんだと思う。

全部を高くする必要はない

とはいえ、何でもかんでも良いものを買え、という話ではない。

それはそれで、お金の使い方としてあまり合理的じゃない。

僕が基準にしているのは、「毎日触れるかどうか」だ。

毎日使う靴、毎日座る椅子、毎日持ち歩く鞄。

こういうものは、使う回数で割ると一回あたりの値段がどんどん小さくなる。

しかも、使うたびの小さな快適さが、毎日積み重なっていく。

逆に、年に一回しか使わないものは、ほどほどで十分だと思っている。

メリハリをつけるだけで、総額はそれほど変わらないまま、満足度はかなり変わる気がする。

「一回で決める」という気持ちで選ぶ

毎日使うものを選ぶとき、僕は「これを長く使う」という前提で考えるようにしている。

そう決めると、選び方が自然と慎重になる。

見た目だけでなく、手入れのしやすさや、壊れたときに直せるかどうかにも目が向く。

買うまでに少し時間はかかるけれど、そのぶん買ったあとに迷うことが減る。

迷いが減ると、頭の中が少し静かになる。

持ち物に対して「これでいいのかな」と思わなくて済むのは、思っている以上に楽なことだと思う。

自分の基準で、ちょうどいいものを

もちろん、予算には限りがあるし、いつも理想どおりに選べるわけではない。

安いものが、たまたま長く使える良いものだった、ということもある。

大事なのは値段の高い安いではなく、「これを選び直さずに済むか」という視点を一つ持っておくことなんだと思う。

次に何かを買うとき、値札を見る前に、それを毎日使うかどうかを考えてみるのも悪くない。

その一呼吸が、お金と時間の両方を、少しずつ守ってくれる気がしている。

――一ノ瀬 雅

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