ポイント五倍、という言葉を見ると、少しだけ足が止まる。
誰でもそうだと思う。
得をする話は、それだけで気分がいい。
ただ、僕はある時期から、ポイントのために遠回りをするのをやめた。
今日はその話を少しだけ書いてみる。
五倍の中身を、計算してみた
たとえば、三千円の買い物でポイントが五倍になるとする。
通常が一パーセントなら、増えるのは百二十円分くらいだ。
その百二十円のために、いつもと違う店まで歩き、指定の日まで買うのを待ち、アプリを開いてエントリーボタンを押す。
そこに使った時間を足してみると、だいたい二十分から三十分になる。
時給に直すと、二百円台だ。
そう考えたとき、僕は少し冷めた。
得をしているつもりで、実は自分の時間を安く売っていたんだと思う。
失っているのは、時間だけではない
もう一つ気づいたのは、頭の容量のことだ。
どのカードで払えば還元率が上がるか。
キャンペーンの締め切りはいつか。
貯まったポイントの有効期限は切れていないか。
こういうことを覚えておくだけで、頭のどこかが少しずつ埋まっていく。
一つひとつは小さいけれど、積み重なると、本当に考えたいことに使う余白が削られる。
僕にとっては、その余白の方がずっと価値が高い。
だから、管理しなければならないものは、できるだけ少なくしておきたいと思っている。
「どうせ買うもの」が、増えていく
ポイントの仕組みには、もう一つ厄介なところがある。
あと五百円買えば条件達成、という表示が出ると、つい何かを足したくなる。
本当は今日いらなかったものを、カゴに入れてしまう。
それで得をした気分になるけれど、冷静に見れば、出ていくお金は増えている。
得をするための仕組みが、結果的に使う額を押し上げているなら、それは本末転倒な気がする。
僕はこれに何度か引っかかってから、条件達成の表示を見ても、深追いしないことにした。
僕が残している、たった一つのルール
とはいえ、ポイントを全部無視しているわけではない。
僕が決めているのは、普段の行動を変えずに付いてくるものだけ受け取る、ということだ。
いつも使う支払い方法を一つに絞って、そこで自然に貯まる分はありがたくもらう。
そのために店を選んだり、日を待ったり、エントリーを覚えておいたりはしない。
還元率が一番高い方法ではないかもしれない。
でも、考えなくていいという状態そのものに、僕はお金を払っているつもりでいる。
この線引きをしてから、買い物はずいぶん速くなった。
迷う時間が減った分、欲しいものを欲しいときに買えるようになった気がする。
小さな得より、大きな手間の削減を
節約やポイ活を否定したいわけではない。
それが楽しい人もいるし、ゲームとして割り切れるなら、それも一つの時間の使い方だと思う。
ただ、もし「なんとなく損をしたくないから」という理由で続けているなら、一度だけ計算してみるのも悪くない。
増えた金額と、使った時間と、頭の中に置いている情報の量。
その三つを並べてみると、自分にとって割に合うかどうかが、わりとはっきり見えてくる。
僕の場合は、割に合わなかった。
だから手放した。
得をすることより、余計なことを考えなくていい状態の方が、僕にはずっと大きなメリットだった。
数百円の還元よりも、毎日の判断を一つ減らす方を、僕はこれからも選んでいくと思う。
――一ノ瀬 雅


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